痛みが無いのは嘘だわ
今私の自由を奪うこの鎖に鈍い痛みを覚えた
それでも私の顔は歪まない
俯いている私からも
そして貴方からも
お互いの表情を読むのは容易じゃないでしょうけど
「フォーチューンよ、命乞いでもすれば
気まぐれに助けてやらんでもないぞ?」
その声は何処までも傲慢で
何処まで自身の勝利を疑わない色を含んでいた
揺れる肩からジグムントはフォーチューンが
苦しそうにその体制に耐えているのだと思ったのだ
今や破損した腕はその形をデータとして再構築する事は難しく
残された腕も重い鎖に絡め取られ
データの改算が行われている
地に膝を付きこれ以上の抵抗が出来る様子など
確立を算出するまでもないのだろう
ジグムントは恍惚とした表情でソレを見下した
簪の落ちた髪が綺麗に靡いた
その瞬間彼女の表情は
誰の予想も期待も裏切って
ただ美しく笑みを浮かべるのだった
「この腕が欲しいならあげましょう」
厭に耳に残るその声
「それでも貴方は私に消滅を送り込めない」
完全にその腕が消える瞬間
美しい翼が見えたのは夢か幻か
最後の顔が記憶に張り付いて消えそうにも無い
最後に聞いた言葉も忘れられそうにも無い
追い詰められた獲物の最後の足掻きを見せてくれ
−−−−−−−揺れた肩は笑いを堪える仕草