うたごえはきえたひとをまださがしつづけていた。そのかたわらでけものはねむる。
夜の来ない世界に、甘く、低く、無意味な子守唄をフォーチューンは歌い続けていた。
随分と長く歌い続けているような気もするし、ついさっき帰ってきたばかりのような気もする。どちらにしても、とても、
疲れていた。ふっ、と息を吐き、彼女は視線をこの世界にいるもう一人の相手に向ける。
棺の中に押し込められるように佇んでいる、漆黒の鎧を模した一体のナビ。まるで死んでいるかのように、棺の中
で身じろぎもしていない。ほの白く、内側から光を放つかのような彼女の姿とは対照的に、その黒はまるで周りの光全てを
飲み込むかのようだった。
この世界には、彼女と、「彼」しか存在しない。…否、ここは、「彼」と彼女のための世界だった。この場所に通じる
リンクは存在せず、二人が居る場所の周りには、ひたすら暗黒が広がっていた。どこに目をやっても、広がるのは
押しつぶされそうな黒。通常の電脳世界ならば他の電脳世界の明かりが夜空に輝く星のように点々と見えるはずなのに、
ここからはそれすら見えない。辺りに広がるのは、真の闇だ。息苦しさに唇を噛んで俯くと、微かに耳に鈴を振るような音が
届いた。はっと顔を上げると、小さな小さな光の粒がふよふよとこちらに向かってくる所だった。
「アンティー…」
僅かではあるが、光がこの場所のほかにもあることが彼女を安堵させた。小さく笑みを浮かべ、フォーチューンはそっとそれ
に腕を伸ばし、相手を傷つけないよう、刃面を器用に寝かせて受け止める。
その上で、何かを伝えるようにチリリリ…と光は瞬いた。
「判ったわ…お疲れ様。」
その瞬きが何かの意味を持っていたのか。微かに表情を曇らせ、それを振り払うかのように
「…行ってきます。」
声を発さない相手に微笑みかけると、フォーチューンは軽く地面を蹴って深淵へと飛び込んだ。
終わりが無いように思える落下の途中で、彼女の身体に変化が訪れる。斧の形状をした腕のパーツが光に包まれながら持ち
上がったと思うと、それは一対の白い翼に変形していた。
それを羽ばたかせ、白い鳥のように闇の中を飛び去っていく。どこまでも続くような闇の中、不意にその姿は、まるで水面に
飲み込まれるように闇を揺らしながらかき消えた。
あとがき
こんな三人だよってことでかいてみました。
フォーチューンの能力は、自分だけの空間を作ることです。電脳世界のスペックをかきあつめ、
何者にも干渉されない絶対世界を作り出すこと。必要とあらば絶対世界に逃げ込むことで
ちなみにハカイシンは普段はここに封印されてます。必要ならば呼び出せます。「けもの」って…ハカイシンのことね。
で、アンティエルドは…サイバーエルフ風味。あ、これでハカイシンがなんなのかわかっちゃった人いるかもね!でもあくまでもやつ
は「ケモノ」ですから…残念!
…なんてこった、まともなナビがいねぇじゃないか!(絶叫)