極楽鳥

 ある英雄が作り出した楽園が、かつてこの地には存在した。
 その孤独な玉座に寄り添うは白い鳥。
剣を手放し、戦舞台を政治の場に代えようともそのあり方は優美にして英哲、彼の王の忠実な左腕。


冷たい風が頬を撫でる
嘆きの夜を越えた先に
この手に残るは新たな誓い

私は巧く笑えたでしょうか
去り行くあなたを送る為
素直な思い押し殺し
ただその背中を見送った

永久を謳った祈りの声
高く澄んで遥かに響き

楽園のその向こうに
何かがあると言うのならば
飛ぶがいい遥か彼方まで
二度と振り返ることなく


 永遠と思われた治世は不意に終わりを告げる。鳥は籠に封ぜられ、王は去った。
 偽りの支配者と楽園に復習を誓う老賢者の執政に喘ぐ民。
孵らぬ理想の卵を抱く腕すら失い、植えつけられた破壊の種に蝕まれながら彼女が見下ろすは悠久の時。


白い花の揺れる丘
戻らぬ人の戻れぬ園
この胸に残るあの日の影

極彩色のモノクローム
常春に惑いうつろう空と
願いも歌も届かない距離
あなたは今笑えている?

永久に幸あれ、と祈りの歌
何処に行けば届くでしょうか

振り返らないあなたは独り
理想の影を追い掛けて
いつか、目指したその場所で
懐かしい未来を見せて

楽園に哭く鳥の名を
今でも覚えているでしょう
私はここで祈り続ける
愛する人に幸あれと


 やがて腐敗した楽園は、新たな信念の元に終焉を迎えた。
総てを灼く終末の光を前に、楽園に殉じるることのできない自らを嘆いて彼女は自らの器を棄てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき
何もいうまい…。恥ずかしいもん。