出逢って、しまった。
会わなかったら、この刃は鈍らなかっただろうか。
会わなかったら、容赦無くあいつを消しただろうか。全力を持って何時かあいつを倒したのだろうか。
そんなこと言っても無駄だって俺は良く判ってる。そこまで愚かじゃないつもりだ。
第一章:馬鹿だけにはなりたくない。
「遅刻確定だ。」
大袈裟な溜息をついてゴスペルがうずくまったのは、何とバスの床だった。最後尾の列にどかっと座り込むフォルテの
傍ら、半ば前の椅子に顔を隠すようにしているがこれはかなり賢明な選択と言えよう。それとは対照的に彼の主人と言えば
容赦無く顔を晒して辺りをねめつけている。バスの中で不良学生がよくやるアレだが、実際フォルテに関して話をするなら
脅しだけでなく本当に何かやらかしそうで、保護者…この場合は主人ではなく、待たせている相手のことを考えているという
御大層な保護者だが、としては気が気ではない。
問題を起こせば直ぐに正体がバレる(只でさえすっぴんなのに)
↓
じゃあどうしてワイリーナンバーズが街中で堂々とバスに乗っているのかという話になる
↓
色々突っつかれるし、多分バスやらなにやらでも指名手配になるだろう。(もう既に一部の施設ではスキャニングシステムが
完備されたという話をワイリー様から聞いた)
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そんなことしたら、街中に出て来るだけでも一苦労だ。
↓
彼女に申し訳が立たないし、多分彼女と会う機会も少なくなるだろう。
↓
はっきりいって、そんなのは嫌だ。
そういう誠に自分勝手なゴスペルの理由を知ってか知らずか、フォルテは周りを睨み続けている。不機嫌の理由は至極感嘆
…バスが遅れているからだ。自分勝手で好き放題、を心情としている彼が苛立つのも無理は無いだろう。
だが、とゴスペルは腹の中で打ち消した。
(バスが遅れなかったとしても遅刻は確定していた様な気がする…。)
そもそもバスを使ったのは電車に乗り遅れたと言う至極簡単な理由だ。羽を貸せ、飛ぶのが速い…と言い出すフォルテを
必死で説き伏せ、(そんなことしたらあっという間に大騒ぎだ)とりあえず電車を待つより早いバスを検索して乗り込んだのだ
が、その電車に乗り遅れた時点で既に遅刻は確定している。ような、気がする。
フォルテは根本的に時間にルーズだ。
第一彼自身、毛の色を変えてくるという念の入れ様なのに